知財業界ではどんな就職・転職先があるのかな?仕事内容や仕事の魅力も知りたいな。
このような疑問に答えます。
- 知的財産業界の就職・転職先と仕事内容
- 知的財産業界の仕事の魅力
この記事を書いた僕は、知財業界歴10年です。
新卒から法律事務所、特許事務所、東証一部上場企業の知財部のキャリアを経験してきました。
知財業界はマイナーですので、どんな仕事があるか知らない方が多いと思います。
そこで今回は、知的財産業界の就職・転職先、仕事内容やその魅力などをご紹介します。
この記事を見れば「こんな仕事があったんだ!?」「私のスキルが活かせるかも!?」などの気付きを得られるはずです。
知的財産の就職・転職先と仕事内容
知財業界の就職・転職先と仕事内容について、以下に記載します。
特許事務所・法律事務所
特許事務所は企業から依頼を受けた弁理士が、特許・意匠・商標等に関する手続などをサポートする事務所です。
知財専門の弁護士もいるため法律事務所もあげました。
特許事務所の仕事は、以下のように細分化できます。
- 弁理士(特許専門)、特許技術者
- 弁理士(意匠専門)、意匠技術者
- 弁理士(商標専門)、商標技術者
- 特許調査員(サーチャー)
- 特許翻訳者
- 図面作成者
- 特許事務員(国内・内外・外内)
それでは一つ一つ見ていきましょう!
弁理士(特許専門)、特許技術者
特許専門の弁理士や特許技術者は、以下の業務を行います。
- 国内・外国の特許出願の書類作成
- 拒絶理由通知に対する中間対応
- 特許異議申立て、各種審判対応
- 特許調査
- 鑑定
- 発明発掘
- 訴訟対応(弁護士と連携)
- ライセンス契約、譲渡対応
- 各種相談
このうち「出願書類の作成」と「中間対応」の業務の割合が高いです。
なお特許技術者は、弁理士のように特許庁への手続の代理行為を行うことはできません。
しかし明細書などの書類は作成できるので、弁理士との業務の差をあまり感じないです。
弁理士(意匠専門)、意匠技術者
意匠専門の弁理士や意匠技術者は、以下の業務を行います。
- 国内・外国の意匠登録出願の書類作成
- 拒絶理由通知に対する中間対応
- 各種審判対応
- 意匠調査
- 鑑定
- 訴訟対応(弁護士と連携)
- ライセンス契約、譲渡対応
- 各種相談
割合として多い業務は「意匠調査」、「出願書類の作成」、「中間対応」です。
意匠専門の弁理士や意匠技術者は、理系の知識がなくても業務を行えるため、文系出身者でも取り組みやすいです。
ただし以下の表のように、特許や商標に比べて出願件数が少ないため、意匠だけでキャリアを積むことは現実的ではありません。
ちなみに、僕が過去に勤めていた特許事務所は300名規模の大手でしたが、意匠担当は2名でした。
法域 | 2021年 出願件数(国内) | 2020年 出願件数(国内) |
---|---|---|
特許 | 289,200件 | 288,472件 |
意匠 | 29,222件 | 28,812件 |
商標 | 164,537件 | 163,148件 |
弁理士(商標専門)、商標技術者
商標専門の弁理士や商標技術者は、以下の業務を行います。
- 国内・外国の商標登録出願の書類作成
- 拒絶理由通知に対する中間対応
- 登録異議申立て、各種審判対応
- 商標調査
- 鑑定
- 訴訟対応(弁護士と連携)
- ライセンス契約、譲渡対応
- 各種相談
割合として多い業務は「商標調査」、「出願書類の作成」、「中間対応」です。
商標業務は意匠と同様に理系の知識無しに行えるため、文系出身者が担当することが多いです。
また意匠登録出願の件数の少なさから、意匠と商標を兼務する方も多いです。
特許調査員(サーチャー)
特許調査員は「先行技術調査」、「侵害調査」、「技術動向調査」などの調査を行います。
また知財コンサル業務を扱う事務所であれば、知財コンサルタントと共同して報告書を作成することもあります。
特許調査は、意匠や商標と比較して多くの時間や手間を要します。
そのため大手の特許事務所の場合、特許調査の部署だけが独立していることもあります。
特許翻訳者
特許翻訳者は、特許明細書などの技術文書を日本語から外国語、外国語から日本語に翻訳します。
特許調査員の場合と同様、特許翻訳の部署だけが独立していることもあります。
能力としては高い語学力が求められるだけでなく、ある程度の技術的知識や法的知識も求められます。
翻訳する書面としては「特許明細書」、「拒絶理由通知書」、「意見書・補正書」が挙げられます。
図面作成者
図面作成者は、図面作成ソフト(AutoCAD、Adobe Illustratorなど)を用いて、特許図面や意匠図面を作成します。
特許調査員などと同様、図面作成のチームだけが独立していることもあります。
図面作成者は、所内の弁理士や技術者からオーダーを受けて図面を作成することが多いです。
そのためオーダーに沿った正確な図面を作成する上では、弁理士や技術者との円滑なコミュニケーションも必要になります。
特許事務員(国内・内外・外内)
特許事務員は、主に以下の業務を行います。
- 出願などの各種手続書類の作成補助
- クライアントへの各種書類の作成と送付
- 優先権主張、年金、更新などの期限管理
また特許事務は以下の3つに分けられます。
- 国内特許事務⇒日本のクライアントの日本への手続に関する事務
- 外内特許事務⇒海外のクライアントの日本への手続に関する事務
- 内外特許事務⇒日本のクライアントの海外への手続に関する事務
外内特許事務や内外特許事務では、海外の現地代理人との英文メールでのやり取りが発生します。
そのため、ある程度の英語力は求められます。
また日本の大手企業は、知財管理システムを導入している場合が多いです。
そのため、クライアントからシステムにあわせた書類納品を要求されることがあります。
企業知的財産部・法務部
企業の知的財産部や法務部では、特許、意匠、商標に関する業務全般を行います。
知財を扱う部署が必ず「知的財産部」なのではなく、法務部や総務部の傘下に「知的財産室」といった形で設けられることもあります。
業務内容を「特許部門」と「意匠・商標部門」に分けて見ていきましょう!
特許部門
特許部門の業務は、以下の通りです。
- 発明発掘
- 特許調査
- 特許明細書作成
- 拒絶理由通知に対する中間対応
- 特許異議申立て、各種審判対応
- 係争対応
- 知財に関する各種契約書の作成
- 予算管理、期限管理
企業によっては、対特許庁手続の大部分を特許事務所にアウトソーシングする場合もあります。
そのため、上記の全業務を担当するとは限りません。
意匠・商標部門
意匠・商標部門の業務は、以下の通りです。
- 意匠・商標調査
- 出願書類作成
- 拒絶理由通知に対する中間対応
- 異議申立て、各種審判対応
- 係争対応
- 模倣品対応、税関対応
- 広告資料などのリリース前チェック
- 知財に関する各種契約書の作成
- 予算管理、期限管理
特許部門と同様、対特許庁手続については特許事務所に依頼することもあります。
また、ECサイトでは商標権侵害の他、著作権侵害のケースもあり、著作権法の知識が求められる場合もあります。
特許庁
特許庁での業務は多岐にわたりますが、主なものとしては「産業財産権の付与」があります。
具体的には特許庁に提出された出願を審査官が審査し、登録するか否かを判断する業務です。
また審査官として一定年数のキャリアを積むと、審判官に昇任することも可能です。
審判官が所属する審判部は、地方裁判所に代わる第一審に相当します。
審判官は、各種審判、異議申立てについての審理を行います。
この他にも特許庁では「知財法制度の見直し」、「中小企業等の支援活動」、「世界知的所有権機関への出向」など、日本のみならずグローバルな仕事もできます。
TLO
TLOとは、「技術移転機関(Technology Licensing Organization)」の略称です。
TLOは大学で生まれた発明を権利化し、権利活用として企業等へライセンスするために存在します。
仕事内容としては、発明の権利化の他、企業等への発明紹介やライセンス交渉など営業的要素を含みます。
その他
特許事務所の仕事内容で紹介した「特許調査」、「特許翻訳」、「図名作成」の業務を専門として行う会社もあります。
能力としては、特許調査員、特許翻訳者、図面作成者として求められるものと大差ないと思います。
企業の応募の中にはフリーランスとしての募集もあり、在宅ワークを希望する方にはオススメです。
知的財産の仕事の魅力
知財業界の仕事の魅力には、次のようなものがあります。
最先端の技術や形状等を扱うことができる(特許・意匠の場合)
特許や意匠は、登録されるための要件として「新規性」が求められます。
つまり、世の中で客観的に新しい技術や形状等でなければ登録できません。
このような最先端の技術や形状等に触れることができるのは、特許や意匠の担当者にとっての最大の魅力といえます。
自分が扱った名称やロゴが身近に表示される(商標の場合)
商標を担当していると、案件で関わった商標を街中の看板やCMなどで見かけることが多くあります。
商標は、自社と他社の商品やサービスを区別するための看板としての役割があります。
そのため社名・商品・サービス名に商標が使われるなど、露出度が高い場合が多いです。
このように、自分が調査や出願に関与した商標が身近に表示されるという楽しみがあります。
高年収が狙いやすい
知的財産の業界では、技術、語学や法律面での高度な知識が要求されるので、給与水準は高いです。
実際に僕の知人の弁理士や技術者は、年収600万円~1000万円の方が多くいらっしゃいます。
また、僕の特許事務所の先輩は、企業知財部に転職した際に年収が300万円UP(500万円から800万円)しました。
このように知財業界では、高年収が狙いやすいという魅力があります。
ワークライフバランスを保ちやすい
一部の書類を除いて、特許庁への提出書類はオンライン手続が可能です。
また、その提出書類の作成やクライアントとの打ち合わせも、PC1つで完結します。
そのため特許事務所や企業知財部では、在宅ワークを推奨としている場合が多いです。
またフレックスタイム制を採用している場合も多く、健全なワークライフバランスを保ちやすい点にも魅力があります。
まとめ
本記事では、知財業界の就職・転職先と仕事内容をご紹介しました。
- 特許事務所・法律事務所
- 弁理士(特許専門)、特許技術者
- 「出願書類の作成」、「中間対応」等が主な業務
- 弁理士(意匠専門)、意匠技術者
- 「意匠調査」、「出願書類の作成」等が主な業務
- 弁理士(商標専門)、商標技術者
- 「商標調査」、「出願書類の作成」等が主な業務
- 特許調査員(サーチャー)
- 「先行技術調査」などの特許調査
- 特許翻訳者
- 技術文書を翻訳(日⇔外国)
- 図面作成者
- 特許図面や意匠図面を作成
- 特許事務員(国内・内外・外内)
- 「各種手続書類の作成補助」、「請求書の作成と送付」等が主な業務
- 弁理士(特許専門)、特許技術者
- 企業知的財産部・法務部
- 特許、意匠、商標に関する業務全般
- 特許庁
- 「産業財産権の付与」、「知財法制度の見直し」などの業務
- TLO
- 発明の権利化、権利活用のためのライセンス交渉などの業務
- その他(「特許調査会社」、「特許翻訳会社」、「図名作成会社」など)
また、知財業界の仕事の魅力もご紹介しました。
- 最先端の技術や形状等を扱うことが可能
- 扱った名称やロゴマークが身近に表示される
- 高年収が狙いやすい
- ワークライフバランスを保ちやすい
知財業界に興味を持ったり、スキルが活かせそうなら、すぐに行動しよう!!
既に企業等に就職している方にとって、転職は人生のターニングポイントになり得ます。
しかし「転職活動」はいつでも自由にできますし、失うものは何もありません。
転職エージェントを使えば、現在の「自分の市場価値」を把握することができます。
自分の市場価値が、所属会社では勿体ないほど高いならば、転職を考えても良いでしょう。
逆に自分の市場価値がイマイチならば、求人情報から逆算して、知識・実務能力を高めましょう。
今後の日本は、終身雇用や年功序列の制度が崩壊し「個の力」が必要な時代と言われています。
その時代に転職活動をしても、競争が激化して希望する企業に入れないという状況も考えられます。
そのような状況を避けるため、自分の市場価値を早急に把握して、「いつでも転職できる状態」を作り出すのです。
転職エージェントは、一度登録すれば、あとはありのままの自分と希望を伝えて、紹介された案件に応募するだけです。
登録は5分程度で終わるので、この機会に行動しましょう。
またエージェントと相性が悪い場合や、紹介される求人がエージェントによって異なる可能性があります。
そのため、転職エージェントは複数登録しておくことをお勧めします。
・特許事務所の転職に強いエージェント
⇒リーガルジョブボード
・管理部門特化型のエージェント
⇒MS-Japan
・弁護士の転職に強いエージェント
⇒弁護士ドットコムキャリア
・ハイクラス転職に強いエージェント
⇒JAC Recruitment
⇒【ランスタッド】
それでは、また次の記事でお会いしましょう!!
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